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以下の文書は、6月28日に共産主義者の大学生から受け取った手紙です。

6月28日:東京大学の五月祭における参政党代表である神谷宗幣講演騒動は、単なる大学内トラブルではなく、右翼の躍進に対する現代日本の左翼運動の危機を象徴する事件であった。

発端は、5月16日に五月祭で予定されていた神谷宗幣の講演会である。高市の総選挙における圧勝と参政党の躍進の後、右翼政治家の神谷が次世代の資本主義管理者を育てるエリート大学に来ることは不思議ではない。主催したのは学内右翼団体「右合の衆」であり、その開催に対して学内では一部の学生の間に強い不安と反発が広がった。とりわけ参政党の排外主義的言説やナショナリズム、女性嫌悪的・同性愛嫌悪的発言に対する警戒感は大きく、一部の学生や活動家が抗議行動を準備していた。しかし、結果として、多くの若者が右派の高市政権や参政党に好感を寄せるか無関心ななか、当日の正門前の抗議には20人ほどの抗議者しかいなく、その多くは若者でもなかった。それ自体は左派の勢いや勢力の無さを印象づけた抗議だった。

その上、事態を悪化させたのは、共産党員の道徳主義的活動家による介入であった。彼らは「差別を許さない」という倫理的正当性を掲げながら、討論によって右翼を敗北させるよりも、糾弾と圧力を優先した。その結果、左派の抗議陣営内部でも「威圧的な党派活動家」と「学園自治を守ろうとする学生層」との対立が激化した。一方で民青や中核派・全学連などは明確な立場を示さずに無関心を貫き、前衛党として真剣に運動に介入する姿勢をみせなかった。高市圧勝や参政党の躍進に対して説明せず、派閥のデモ内で高市打倒!を絶叫するだけでは労働者や若者を獲得できない。

最終的に、道徳主義の圧力のもとで、学生グループは差別発言撤回を求める誓約書を神谷に提出し、座り込みへと追い込まれた。一方で右翼側もまた狼狽し、公演開始は大幅に遅延する。そして最後には第三者による爆破予告が発覚し、五月祭そのものが全面中止となった。

だが、この結果は本当に左翼の勝利だったのか。

むしろ逆である。神谷と参政党は、一連の騒動を「抑圧的左翼による暴力」として大衆に印象づけることに成功した。彼らは以後、「言論弾圧の被害者」という立場を利用しながら、警察や国家権力を動員する口実をより自由に獲得することになる。左翼側はといえば、うんざりさせるようなキャンセルカルチャーの反復と政治的な議論に応えることのできない無力さの暴露によって多くの大衆をさらに遠ざけ、空虚な道徳的正当化を繰り返す以外の政治的言語を失った。

ここには現代左翼の根本問題が現れている。

参政党を単に「差別主義」と呼ぶだけでは、なぜ多くの労働者や若者が生活苦に直面する大衆が右翼を支持するのか、という政治問題には答えられない。国際的な政治状況において参政党やトランプ、リフォームUK、AFDなどの右翼勢力が事実躍進しているのだ。そして日本では高市が築いた右翼ポピュリズムの強固な政権に大衆の不満を吸収したが、立憲や社民党のようなリベラルで進歩主義の護憲派勢力は選挙で完全に崩壊した。日本共産党も旧態依然の進歩主義勢力との共闘路線に固執し、選挙では大きな打撃をうけた。日本共産党の依拠するしばき隊的な路上やSNS上の糾弾や学園主義的閉鎖空間の論理は、右翼を「迫害される庶民の代弁者」として強化し、左翼と被抑圧者防衛のための社会的基盤を掘り崩している。

もちろん参政党は危険である。彼らは入管の管理強化や性教育への介入を通して外国人やマイノリティに対する抑圧的制度を設計し、被抑圧層への迫害を強化しようとしている。そして何よりも高市政権とトランプの反中国の軍事化キャンペーンに参政党も賛同し、軍拡と日米同盟という労働者の生活破壊の根本原因を強化しようとしている。しかし、参政党とファシスト党やナチ党のような歴史的ファシズムを無差別に同一視することは誤りである。

ファシズムも単なる差別思想ではない。それは労働組合や左翼政党など、労働者階級の独立組織を暴力的に粉砕する武装した小ブルジョワ階級による反革命運動である。1920年代のイタリアのファシストは強力なイタリア労働者組織を叩きのめすために国家の通常の暴力機構とは独立した軍隊を動員しなければならなかった。また、KKKのような人種テロ組織も労働者階級の分断のために有色人種に対して物理的暴力を組織する。しかし今日参政党は移民やマイノリティを狩りだして殺害するためにギャングたちを動員したりはしていない。もしそれが実際に起こっているのなら、労働者組織による実力的防衛と粉砕が必要となる。

だが参政党は、現段階では大量の大衆的支持を伴う議会右翼であり、そこには質的歴史的差異が存在する。その目的は革命期のような階級闘争の最も緊張した局面において労働者階級や被抑圧者を武装した私兵によって物理的に粉砕することではなく、労働者大衆を右翼オルタナティブに留めておくことにある。実際、神谷は言論の自由の保護者を名乗ることに甘んじて暴力的な左翼を非難することを欠かさない。したがって同じ方法では戦えないのであり、労働者大衆を神谷から引き剥がす政治的暴露が必要なのである。

ではなぜ参政党が支持を拡大しているのか。

背景には、長期的経済停滞と生活不安がある。実質賃金は低下し、雇用は不安定化し、若年層は将来の展望を失っている。グローバリゼーションのもとでの基幹産業の海外移転による空洞化と労働条件の流動化、さらに少子化による労働力不足によって、企業は非正規労働者や外国人労働者を低賃金・代替可能な労働力として利用しようとする。そして税金や社会保険料の生活への圧迫や年金や社会サービスの削減はまさに軍事費の増大を賄うために進行している。グローバリズム−リベラルなアメリカ帝国主義の覇権下の比較的安定した収奪体制−の没落とともに腐朽した日本帝国主義の体制は労働者階級にこれまでのような生活の安定と保障をもはや与えられない。だからこそ「日本人の生活と賃金を守れ」や「核兵器は安上がり」といった参政党的主張は、歪んだ形であれ労働者の現実的不安に接続する。こうして参政党の移民が貧困化を招くという嘘も大衆や若者のなかに共鳴を見出す。

さらに既存左翼と労働組合の無力が、この流れを加速させている。参政党は、現実には資本と対決しないにもかかわらず、「何もしない組合」「グローバリズムの既得権化した左翼」を攻撃することで、怒れる労働者を吸収している。 実際、ソ連の崩壊後に本格化したグローバリズムの新自由主義的な改革を受け入れてきた3つの労働組合連合体の指導部はいずれも、脱工業化と組合員の生活悪化に対して真剣な闘いを繰り広げてこなかった。1980年代における国労の解体にはじまる民営化や、あらゆるタイプの「非正規」労働の導入を受け入れた結果(これらは組合自体も壊滅させた)、組合員の実質賃金は30年間上がっていない。

こうした現実に対して、リベラル多文化主義は解答にならない。「他者との共生」や「差別反対」を抽象的に叫ぶだけでは、日本人労働者の生活苦にも、主に低賃金のエッセンシャルワークを押し付けられている外国人労働者の劣悪な労働環境にも対処できないからである。 しかし現在の日本共産党や一定数の極左は、多文化主義の道徳に全面的に追随している。特に、日本共産党は、組合労働者の動員を通じた階級闘争の路線を抑え込みながら、リベラルの戦術を振りかざすことで大学や市民運動の小ブルジョワの歓心を買おうとしている。彼らは右傾化する労働者を、自ら取り戻すべき対象ではなく、「遅れた脱落者」として見下し、糾弾と排除によって追い詰めることを正当化する。こうして、多くの労働者が左派やリベラルを憎み、移民に対して不満を抱くようになった。その結果生じているのは、右翼の拡大と左翼の孤立という悪循環であり、参政党こそが真の現状打破勢力・左派は現状維持勢力と見做されている。

必要なのは戦略と路線の転換である

外国人労働者を排除することではなく、同一の組合を通じて組織化し、日本人労働者と同等の賃金・市民権・労働条件を保障することである。資本が利用する低賃金分断を破壊し、階級全体の条件を引き上げることこそが、参政党に対する有効的な対抗軸となる。「他者との共生」や抽象的な国際主義に訴えることは階級的組織化の出発点にならない。日本の労働者に外国人労働者の防衛が資本家という共通の敵に対する闘いを前進させる一歩であると説明することが重要だ。建設業などで非正規の低賃金労働を強いられる技能実習生や市民権を保証されない特定技能労働者の組織化と市民権獲得の闘いを、日本の非正規労働者の組織化と待遇改善の闘いと結合しなければならない。それは、階級全体の団結と実力を強化し、労働者階級のわずかな層にしか分前を与えるつもりのない資本家階級と神谷のような政治家の階級的立場を暴露する真の脅威を与える。これに対して、現在の日本共産党の政治路線は、資本主義の進歩主義勢力との共闘によって国会での問題解決に懸けているが、外国人や非正規労働者の組織化による労働者階級の強化という実質的な方向を回避しているのだ。

共産党内部の反対派は、官僚主義指導部との政治的闘争を開始しなければならない。進歩主義勢力との共闘や道徳的非難から路線転換するためには、単に反対するだけでは足りない。全労連などの組合と労働者を基礎とした階級的運動を強化し、日米安保に反対する反帝国主義的な綱領と労働者階級から選抜された指導部を基準にして指導部を試練にかける闘争が必要である。 具体的には、次の大会で指導部の「反ファシズム統一戦線」という野党進歩主義勢力との共闘を含む指導路線の破綻を暴露し、スパイ防止法成立阻止に向け、労働組合や中核派・現代革命労働者党と革マル派などの社会主義勢力との階級的統一戦線に転換させなければならない。

また学生運動も、閉鎖的学園主義に留まってはならない。大学職員組合の非正規職員を組織化する運動と地域労組との結合を強化し、留学生も含めた学生自治組織の実質的組織化を進めるべきである。 組合と学生自治の相互防衛は、教職員・学生・留学生への弾圧を跳ね返し、大学の帝国主義的な軍事化に対抗する一歩となる。

真の防衛とは、SNS上や路上での糾弾でも、キャンセルでもない。労働者階級の悪化する生活条件に対する闘争と軍事化・右翼的反動に対する闘いは結びついている。労働者階級との結合のなかでのみ、右翼と国家権力に対抗する力は形成されるのである。