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以下の文書は、『Women & Revolution』第46号、 20252月から翻訳されたものである。

中国の女性たちに待ち受けているものは何か?米帝国主義が中国の歪曲された労働者国家に圧力を増大させるなか、中国共産党は家族の強化に力を入れている。そしてこれには、女性に対する反動的な社会統制も含まれる。いわゆる離婚の「冷却期間」法の導入だけでも見よ。この法は、離婚成立前に、30日の待機期間を義務付けている。官僚は女性に3人の子供を持つことを強く奨励している反面、経済の市場化が女性の時間を節約する社会サービスを破壊してきた。その結果、女性はすでに仕事と家族の世話を両立させる一方で、さらに子供を持つ余裕がない。一層悪いことが農村に現れている。そこでは「鎖の女性」という大規模なスキャンダルが起きている。改革開放の導入以来、彼女たちは拉致され花嫁として買われた家事奴隷である。

家族を強化し資本家階級と手を組み続けるなかで、中国共産党は「中国の特色ある社会主義」の内的矛盾を深め、好戦的な米国に対して中国を防衛する能力を掘り崩している。来るべき時期において、女性には二つの道がある。すなわち、中国共産党の絶対的命令の下で家事奴隷に戻るか、米帝国主義と戦うため国際主義の労働運動の先頭に立つ革命的闘士として立ち現れるか、どちらかである。

どうしてこのようになったのか?

中国での女性の状態は、常にこの国全体にわたる社会的発展のレベルを反映してきた。中国革命による半植民地経済の破壊は、それが国家発展の道を開いたのと全く同様に、女性の状態の真の改善の基盤を創り出した。女性は、初めて、男性と同等の土地の分配を受けることができ、自由に離婚を申し立てることができるようになった。中国の物質的な貧困にもかかわらず、集団的な料理場や家事労働を以って、家庭内労働を社会化するという真剣な試みがなされた。その結果、1970年代後半までに、70%以上の女性を労働力に参加させることができた。共産党の女性たちは、土地改革の急進的な前衛の中にいた。しかし、毛沢東主義の中国における巨大な官僚的歪曲は、強制という方法以外で生産性を向上させることを不可能にした。結局のところそれは、物質的に貧しく孤立した経済を麻痺させ停止状態へと追い込んだ。そしてついには、鄧小平の右派による市場改革が前面に出てくるという危機を生み出したのである。

こうした発展には計り知れない矛盾が存在する。世界経済に中国が統合されて30年以上が経ち、女性は社会化された生産工程の中心に統合されるようになった。同時に、搾取と家族の束縛が働く女性の新たな自由を悪化させる。中国の女性は、第三世界の他の女性と比べて、その社会的地位において実際の進歩を体験してきた、そしてしばしばこのことを政治的にも自覚している。主として、それは、資本家階級が国家権力を握っていないからであり、経済の要所が依然として集産化されているからである。このことは、政権に莫大な海外投資を生産的な国内開発へと向けさせることを可能にした。何百万もの中国人労働者が貧困から脱した一方で、中国共産党による国際資本主義への全面的な順応は、大変な犠牲を伴った。集団的なケアシステム、農村の育児、健康管理や高齢者の介護の解体は、社会的な大惨事となっている。それは、マルクスが言ったように、あらゆる「古いがらくた」の復活を伴ってやってきている。 花嫁価格の復活と高騰、あるいは家族内の財産を男子が相続するという社会的選好が、女性より3,500万人の男性が多いという巨大なジェンダーの不均衡を生み出している。 その結果、古代の社会的諸関係がレベルの高い現代産業と混合している。

中国の社会進歩は、中国共産党の成長モデルの中核にある諸矛盾を拡大させた。つまり経済発展が、米国支配の世界秩序への統合と国内で成長する資本主義に依存してきた。農村の貧困は国家の発展を遅らせてきたが、しかし中国のグローバル化した経済へのアクセスが、輸出に向けた生産を通して、この貧困を部分的に克服させることを可能にした。今日、中国に対する最も強力な脅威は米国に由来している。米国は国際経済を引き裂き、中国をグローバル市場から締め出すため、例えば関税などの国家障壁を引き上げている。中国共産党の国家官僚の利益は、トランプへの対応が、アメリカ帝国に対して米国労働者を動員しようというより、むしろ米国と中国の労働者階級間の民族的分裂を悪化させるということである。

外圧が増大するなか、習近平と官僚たちは、女性たちに「結婚と出産の新たな文化」に従うよう要求している。中国共産党は、資本家たちをさらに疎外し、また収奪さえするというよりは、大量妊娠を推進することで、安価な製造業を活性化するために大量の労働力を提供するという旧いモデルを強化しようとしてきた。これこそ「三人っ子政策」の背後にあるものである。この政策は、孝行という伝統的価値観を思想的に押し進めることと結び付いている。結局のところ、中国共産党の手法は、女性を労働力から引き離すことを意味し、政治的、経済的、さらには軍事的な力の大きな潜在源を失うことになるだろう。米国との協力を維持できず、国家の官僚的利害に縛られ、動揺する中国共産党は、米帝国主義を犠牲にするよりむしろ、女性や労働者階級を犠牲にして、社会的安定を維持しようとしている。資本家を収奪し、質の高い医療、学校、完全雇用を提供することよりむしろ、中国共産党は、農村の子供たちを条虫感染で無力化させ、学生たちを高考(非常に競争が激しい大学入試)に備えることで青年期を無為に過ごさせている。一方では、エリート校出身の大卒生たちは依然として就職できないのである。しかし、若者たちは子供をもうけるはずである。住民を個々の世帯に分けることは、経済の生産性の土台を掘り崩す。何百万もの個々の世帯が、料理、掃除、育児といった繰り返されるこまごまとした雑事に日々資源を費やしているからである。つまり、革命がその社会遺物の根絶の基盤を築いた。しかし、中国共産党はまさにその社会遺物を使って自身を支えているのだ。

来るべき時期において、革命家が女性の解放のための闘争を中国の防衛に結び付けることは、絶対に必要なことである。とりわけ、自由主義秩序の崩壊に対する中国共産党の反動的な対応策は、女性問題の領域に関して、最もはっきりと示されているからである。家庭では、あらゆる種類の反動的なイデオロギーが蔓延しているが、それは、女性の地位の低下とその社会からの孤立を反映したものである。その一方で、女性が政治的・経済的な仕事に就けるようにすることは、中国をアジアや世界中の女性にとっての強力な標識にするだろう。市場化によって破壊され衰退した社会サービスの穴を埋めるため家族が利用されている一方で、「ゼロコロナ政策」でその壊滅的な影響が全面的に示されたように、質の高い保育や年金によって家庭の負担を緩和することは、働く男女にとっての結集点になりうるだろう。しかしながら、家族の諸機能を社会化し女性を家庭から解放することに向けたあらゆる取り組みは、米帝国主義による国際経済の支配を打ち破ることを必要とするのである。

フェミニスト運動の現状

フェミニスト運動は、反帝国主義の展望を持たないで、女性の権利のために戦うという問題をはっきりと示している。官僚はフェミニスト運動を刺激しあおり立てている。この運動は労働者国家に敵対し、女性の状況に正当にも憤慨する活動家を、体制に対する破壊槌として利用しようとする欧米メディアのお気に入りである。中国共産党が女性を家庭へと追いやっている現在、フェミニスト運動は、中国社会でかつて規制された正当性から外れ、激しくエスカレートする弾圧にさらされている。革命家が国家弾圧からフェミニストの抗議者たちを防衛することは絶対に必要である!フェミニストが直面している残忍な弾圧は、彼らを帝国主義者のもとへさらに追い込むだけである。

しかし、フェミニスト運動が女性の状況を実際に変えることができないのは、そのリベラルな展望と戦略によるものである。フェミニストの方法の問題は、フェミニストのコメディアン杨笠(ヤン・リー)の文化的な論争に集約されている。彼女の男性無能論に関するジョークは論争を巻き起こした。これに対して、多くの男性は、西洋のブルジョアのジェンダー政治が中国と労働者階級の団結を破壊すると主張することで、現状と官僚制を防衛するのを選択した。このような反応は、フェミニストの戦略が、社会的不平等に対して中国の労働者を団結させることはできないし、その意図もないという事実を反映している。むしろ、それは中国のナショナリズムに火をつける。そのナショナリズムは、外国の侵略に抵抗する国家の強さが、家族の防衛から始まるという主張である。中国共産党の女性に対する反動的政策が労働者大衆全体の状況を掘り崩している。そのことを明らかにすることを通して、女性解放の戦いを中国の防衛と結び付けることは、女性の運動をより強固なものにするだろう。

フェミニストは、中国共産党が女性たちに3人の子供を産むよう強い圧力をかけていることに、当然にも憤慨する。そして、多くの女性たちが出産や結婚を拒否するといった分離主義の手段に訴えている。都市のプチブル女性たちにとっては、「寝そべり」と家族の義務を個別に拒否することが可能かもしれないが、労働者階級や農民女性たちにとってはそうではない。彼女らは家族に頼り生き延びるための資源を共有している。フェミニストは女性が母性を拒否する権利にのみ焦点を当てることにより、官僚の反動的政策と戦おうとしている。それはブルジョア女性の「自由」を擁護しながら、女性を搾取可能なままにしておくほうを好む資本家階級の手中に、あからさまにフェミニストが導かれることを意味する。フェミニストが中国の資本家階級と手を組むことは、中国の社会化された財産の破壊への道を準備することを意味する。それは女性の状況をさらに一層後退させるだろう。

旧ソ連や東ヨーロッパの労働者諸国家で資本主義が復活した後、女性たちは解放されず、逆にその後に続いた社会の腐敗の矢面に立たされた。産業の深刻な空洞化により、女性たちは労働力から排除され、「Kinder, Küche, Kirche」(子供、台所、教会)へと追い返された。新たに設立された資本主義国家の支援により、宗教が再び勢いを増した。スピード離婚、利用しやすい中絶、大幅に助成される家賃、無料の保育や医療は消え去った。すべてが労働者国家とともに解体された。スターリニスト官僚が 「社会主義の戦闘部隊」として家族を補強したにもかかわらず、そして労働者諸国家が西側諸国と比べて物質的に貧しかったにもかかわらず、集産化された経済は、女性が最も豊かな資本主義諸国で経験した以上の社会的・経済的独立を達成することを可能にした。フェミニストは、反革命のために帝国主義者と手を組むことで、女性にとって最も後退した社会転換の一つのために結集した。

女性の解放を中国革命の防衛と結び付いた展望のないフェミニストは、道徳主義という鈍い手段でナショナリズムに対抗するしかないのである。それにより、西側諸国に目を向けるプチブル女性と、敵対する米帝国主義と戦う上で中国共産党を不可欠だと見なす労働者階級の人々との間の分裂を深めている。フェミニストの手法は、女性についてより進歩的な考えを持つことを基準に人々と提携することに頼る。そうした手法に対して、革命家は反帝国主義の綱領に基づき、女性の運動を再構築しなければならない。中国共産党と対峙し、公共サービスを再建し、家族の諸機能を社会化することに物質的利益を持つ労働者大衆と団結することによってのみ、中国ナショナリズムを打ち破ることが可能となるのである。

毛沢東主義反対派

帝国主義者や一部の中国資本家によるフェミニズムの容認と採用に対して、毛沢東主義の主要な潮流は、階級的立場からフェミニズムを批判しようとしてきた。多くの毛沢東主義者が、フェミニスト運動のプチブル的性格を認識し、資本家がフェミニズムを利用して女性の消費者基盤を引き付けようとする皮肉なやり方を認識している。しかし、彼らは、女性の権利が階級闘争からそらせたり、社会のさらなる発展によってのみ達成されるという誤った政治的結論を下している。もしマルクス主義者が急進的な反資本主義の方策を追求しているが、労働者階級と被抑圧者全体を団結させる手段によって女性の解放のために戦う綱領を持たないなら、男女間の対立は依然として残る。これこそが、女性の運動が親欧米のリベラル派フェミニストに支配されるようになった理由である。毛沢東主義者が拒否するのは、世界帝国主義への中国共産党の順応に反対することによって、女性の解放とより広範な国家の発展のための闘争を結合する必要性である。

多くの毛沢東主義者にとって、文化大革命はいかに女性の運動が階級闘争と結び付いて前進すべきかという例を示した。しかしながら、文化大革命は、国家の発展と女性解放の主要な障害が、中国労働者国家の孤立と、中国共産党による国際革命の可能性の絞殺だと実際示している。破滅的な大躍進政策の後、中国共産党の指導部から締め出された毛沢東は、新中国の硬直した社会階層に不満を抱く反官僚主義的左派の若者の感情に訴えることで、自身の権力を再確立しようとした。毛沢東は、革命の獲得物を国際的に拡大するのではなく、彼に反対する党内の諸分子を思想に基づき粛清するなかで、中国の大衆を動員しようとした。毛沢東はこうした分子が出現しつつある資本家階級だと主張した。毛沢東と党内「右派」が異なる戦略を追求する一方で、両者は官僚の特権を擁護する仕方で中国を防衛しようとした。紅衛兵は、毛沢東との同盟に縛られ、労働者国家の孤立化を克服することにより、官僚制の根源に立ち向かう物質的条件を創り出すのではなく、「走資派」への道徳主義的粛清を通じて、資本主義思想と戦うことしかできなかった。毛沢東への忠誠心に制限されていたことが、紅衛兵をますます感情的な道に引き込んだ。そして官僚制に対する政治闘争に労働者と学生を団結させるのではなく、労働者に敵対し、党の派閥間で国を分断した。文化大革命の観念論的な戦略は、フェミニストの戦略と大して違わなかった。この戦略は労働者階級を共通の要求で団結させる綱領を押し出すのではなく、反動的な思想を持つと主張する人々を粛清しようとした。その結果、両方の戦略は労働者階級内に分裂を深めることしかできなかった。

とは言え、毛沢東は「一国社会主義」の限界に火を付けた強力な大衆運動を解き放った。そして彼の権力が保証されたと感じたとき、人民解放軍を動員して流血の弾圧を行った。これは、毛沢東の自給自足モデル、そして彼に対する党内反対派の双方が、帝国主義との平和共存を維持する必要性に由来しているためである。それは、数年後にソ連に対抗して、毛沢東がリチャード・ニクソンと米帝国主義との友好関係を求めようとしたとき、如実に示された。このとき、まさに米帝国主義がベトナムで戦争の只中にあったのだ。

多くの女性にとって、文化大革命は大いに政治に関心を持たせるきっかけになる事件であった。彼女たちは、男性の紅衛兵とともに、「四旧」(旧思想、旧文化、旧風俗、旧習慣)を攻撃し、後進的な革命前の中国から生き残ったあらゆるものを破壊すると誓った。紅衛兵とマスメディアは、女性が政治と軍事活動に専心すべきだと強調した。しかしながら、毛沢東と中国共産党のスターリニスト綱領は、社会的な結束と服従を促進するための不可欠な手段として、家族に依存している。集産化された財産が社会的に女性を統合する基盤をもたらす一方で、官僚は労働者大衆の、とりわけ働く女性の政治的発展を抑圧することによってのみ、権力の座にとどまることができるのである。

前進への展望

女性解放は帝国主義体制に立ち向かわずにはあり得ない。この体制は中国を圧迫し、世界舞台で孤立させ、中国共産党が社会に維持してきたあらゆる矛盾を悪化させている。また、労働者階級が、女性の解放という大義を取り上げずに、中国共産党から政治権力を奪うこともできない。

女性の運動は、無料の医療、無料の保育、高齢者の完全な退職給付のために戦うなかで、労働者階級と連携しなければならない。これは、介護の重荷から女性を解放するだけでなく、労働者階級と農民全体のより高い生活水準ももたらすだろう。女性が家族の重荷で身を滅ぼす一方で、高い失業率は何百万人もの若者の将来を台無しにしている。社会サービスの改善と拡大のために戦うなかで、女性の運動は失業者を動員し、社会化された介護、新規労働者のための教育、新しい施設の建設の仕事のために戦うことができる。

力強い中国の女性運動はまた、女性を国際的に、とりわけアジアや第三世界の女性を国際的に結集するだろう。それは、抑圧に対する革命的な労働者階級の解決策に向けた戦いである。労働者を犠牲にして、グローバル・サウスのエリートたちと同盟を築くという中国共産党の戦略ではなく、革命家は、労働者階級を強化する方法で、中国の生産能力を第三世界に拡張するため戦うべきである。例えば、完全に労働組合に組織化された状況下で工場を建設し、女性を組織化された労働力に組み入れることによってである。これこそ、フェミニストによる親西欧戦略に対する具体的な代替策をもたらすことができる。このフェミニストは、労働者階級を分裂させ、女性の解放と民族解放のための闘争を結び付けることができない。

中国共産党による民族主義の戦略は、世界帝国主義との幻想的な「平和」を支持して、労働者階級を絞めつけ、家族を強化することを意味する。中国共産党に対置することによってのみ、中国の女性運動は労働者階級のなかにしっかりとした同盟者を見出すことができる。国際的な反帝国主義の女性運動に向けて前進せよ!