https://iclfi.org/pubs/icl-ja/2025-ko
以下の文書は、国際共産主義者同盟(第四インターナショナリスト)の2024年12月10日付け『Spartacist』付録からの翻訳である。
戒厳令を課そうとする企ては押し返されたが、南朝鮮の危機は決して終わってはいない。何百万もの人々が、右翼の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の追放を要求して抗議活動を行っていて、軍事独裁時代の再来を望んでないことを明確にしている。しかし、南朝鮮の民主的諸権利を防衛する戦いを成功させるには、弾圧と反動の動きの背後にあるものを理解する必要がある。南朝鮮を破滅へと向かわせている根本的要因は、米帝国主義との同盟である。
南朝鮮は、75年以上にわたり、東アジアにおける反共の拠点として米国に仕えてきた。1980年代後半に冷戦が終局に向かうなか、そして米国に支援された独裁政権に対する広範な抗議活動のただなかで、ワシントンは、私有財産や経済を支配する財閥(チェボル)資本主義複合体を危険にさらすことなく、大衆への締め付けを緩めることができると決定した。南朝鮮は、うわべだけの民主主義を導入しつつ、リベラルな世界秩序に完全に組み込まれ、資本主義のグローバル化の主要な恩恵国となった。同時に、1997年と2008年の経済危機が示すように、南朝鮮は帝国主義に依存し、抑圧され続けた。
しかしながら現在、米国の世界秩序は衰退しつつある。米国は、これを覆すため、最大のライバルである中国、そしてロシアと対峙する道に乗り出している。南朝鮮は、重要な前線国家として、ますます圧迫されているのだ。軍事面では、これは中国に対する米国の先進兵器の配備、南朝鮮の軍装備品のウクライナへの配送、北朝鮮に対する軍事演習の強化、そして一層高まる軍事費の要求を意味している。経済面では、ワシントンからの圧力により、南朝鮮は中国との貿易を大幅に減らし、180億ドルの過去最大の赤字を記録するに至っている。一方、すでに脆弱な南朝鮮経済は、トランプの保護主義により、さらに打撃を受けることになるだろう。米国の対中攻勢は、南朝鮮資本主義の諸矛盾を限界点へと押しやる中心的な要因である。
バイデン政権は、尹大統領の戒厳令宣布を批判し、尹大統領が行き過ぎを犯し、極めて重要な同盟国を不安定化させていると懸念を示した。しかし、このことで誰もがその根本的な動力学を見失うべきではない。南朝鮮の経済成長と民主化を可能にした環境は終わりを迎え、反動的な弾圧への圧力はただ高まる一方である。トランプの返り咲きは、この締め付けがさらに強化されることを意味し、南朝鮮の資本家たちが、民主的諸権利や戦闘的な労働組合運動に対してよりすさまじい攻撃を開始せざるを得なくするだろう。
前進する道は何か?
反尹の抗議運動には、前軍事独裁政権の終焉後に生まれた若者が参加し、全国民主労働組合総連盟(民主労総)によるストライキも目立って含まれている。そうだ、尹は打倒されなければならない。しかし、ひとりの特に右翼の大統領を罷免したところで、南朝鮮が直面している社会の破滅的状況に対処することはできない。問題は、抗議運動が代わりに期待している主要勢力が、反動への衝動を煽る米国との同盟にそれ自身結び付いていることである。
民主労総や他の抗議運動の指導者たちは、尹の与党・国民の力を南朝鮮の他の主要な資本主義政党である民主党に置き換えようと後押ししている。民主党による米帝国主義への忠誠は、文在寅(ムンジェイン)が、その大統領在任中に、中国に対する米国のTHAADミサイル迎撃システムの追加配備を歓迎したとき、はっきりと示された。労働運動に関しては、民主労総の指導者たちが民主党政権の下で逮捕・投獄されたが、これは今日国民の力党の下での状況とまったく同様である。
労働者大衆の利益のために危機を解決するには、民主党とその衛星諸党として奉仕するより小さなリベラル、ポピュリスト政党との政治的断絶が必要である。彼らは、右派と同様に、南朝鮮の資本家や米帝国主義の支配者に恩義を受けているため、この国が直面している社会的・経済的大惨事を解決することができないのである。
民主的諸権利を防衛し、南朝鮮の労働者と貧困層の利益を前進させる戦いは、国内の搾取者に対する闘いを、究極的に采配を振るう米帝国主義者に対する闘いと結び付けるプロレタリア反帝国主義戦線を鍛え打ち固めることが必要である。1950-53年の朝鮮戦争の前やその最中に300万人以上の朝鮮人民を殺害し莫大な犠牲を負わせ、朝鮮民族を分断したのは米国なのだ。70年たった今も、約3万人の米軍が依然として半島に駐留し、米国は南朝鮮軍の最終的な作戦指揮を執り行っている。
南朝鮮とその地域全体における反動と戦うために、労働者階級を闘争の中で団結させることが必要である。出発点は、中国と北朝鮮の労働者国家に対する米国主導の攻撃に反対しなければならない。同時に、北京と平壌で支配するスターリニスト官僚に反対することが必要である。彼らの民族主義の綱領は、朝鮮の革命的再統一と国際社会主義革命のための戦いを掘り崩すものである。
南朝鮮の社会主義左翼の様々なグループは、民主党への支持に反対し、民主労総指導者たちがあれやこれやのブルジョア諸勢力と提携しているのを批判している。しかし、彼らはこうした反対や批判を米国との同盟の問題と結び付けてはいない。この同盟は常に南朝鮮の政治的・経済的発展を形作り、今やそれを破滅へと追いやりつつある。中国に対する米国の攻撃に反対するどころか、彼らの一部は誤って中国と米国を同一視し、両国とも帝国主義だと主張しているのだ。さらに、南朝鮮で反帝国主義を掲げることは、南におけるブルジョアジーのリベラル派と、中国や北朝鮮のスターリニスト支配者たちへの屈服を意味する、と主張する者さえいる。こうした立場は根本から間違っており、労働者階級を誤った方向に導くだけである。
南朝鮮資本主義のリベラル派への幻想から労働者をいかにして断絶させることができるだろうか?このことは、抽象的なスローガンや、この国で起こっていることを動かす世界的な展開を無視する見解によっては、決して起こらない。戒厳令は兆候である。その根底にある病弊は、中国に対し米国が推し進める攻勢であり、それは南朝鮮を破滅へと引きずり込んでいるのである。過去40年間にわたった闘争を通じて獲得した最も基本的な民主的諸権利や他の獲得物でさえも防衛するために、米国との同盟を断絶する戦いが必要である。社会主義者にとっての緊急の任務は、この中心的な問題を前面に押し出し、民主主義の防衛を主張するあらゆる勢力にたいして、単刀直入に問うことである。あなたはどちら側に立つのか、米国かそれとも労働者階級か?
米軍との同盟を断絶せよ!米軍と基地はすべて出ていけ!
中国と北朝鮮に対する米国主導の攻勢に反対せよ!
尹錫悦と国民の力党を打倒せよ!民主党への支持反対!
米帝国主義と南朝鮮資本主義に対するプロレタリア反帝国主義戦線を構築せよ!